THE KING OF COOL #6 〜SANTANA〜
<Story Telling >
2000年春、その年のグラミーの発表に誰もが「まさかっ!」と耳を疑った。
アルバム「スーパー・ナチュラル」、シングル「スムーズ」、ともに大ヒットを記録していたものの、デビューから30年を数えたそのバンドにその栄誉が輝いたからだ。

ラテン・サウンドとブルース・ロック、そんなネイティヴな音の世界を縦横無尽に泳ぎつづけるそのバンドは、1969年、あのウッドストック・ミュージック&アーツ・フェスティバルで衝撃のデビューを飾るのであった。バンドのネーミングは、リーダーのセカンド・ネームから、シンプルに“サンタナ”と呼ばれた。

“サンタナ”のリーダー、そしてギタリストの“カルロス・サンタナ”は、1947年、メキシコ・ハリスコ州で生を受ける。ヴァイオリニストの父をもち、初めて手にしたギターも父からのプレゼント。音楽的には、恵まれた環境で育った。そして、サンタナ・ファミリーはその後、メキシコ移民としてサンフランシスコに移り住むことになる。

時は1960年代、シスコに、あのフラワー・ムーヴメントが起こりつつあるころだった。1966年、“カルロス”は、ハイスクール時代の仲間たちと“サンタナ・ブルース・バンド”を結成する。ブルースを演るバンドにもかかわらず、このグループは、パーカッションをフィーチャーし、リズムを強調した独得の演奏を繰り広げていた。

そんなとき、バンドは、フィルモア・オードトリアムへの出演機会を得る。あのビル・グラハムが彼らのマネージメントに乗り出したのだ。ジェファーソン・エアプレン、グレイトフル・デッド、バターフィールド・ブルース・バンド、、、彼らは、いつのまにか、シスコを代表するバンドと共演するようになり、彼らもまた、シスコのシーンの中核をなすバンドになっていた。

1969年8月、彼らは、ウッドストック・ミュージック&アーツ・フェスティバルのステージに立った。
“サンタナ”の伝説がここから始まる。

デビュー・アルバム「サンタナ」のヒットにより、“サンタナ”は、全く新しいスタイルのロック・バンドとして世界中から注目される。初期に頃こそブルース的なアプローチも目立ったものの、バンドのサウンドは、よりパーカッシヴなものに成長し、ハードなギターをフィーチャーしたラテン・ロックへ移行していく。
そんな中、“カルロス”は、マイルス・デイビス門下のギタリスト“ジョン・マクラフリン”と交流を深め、ヒンズー教に傾倒。精神世界的音楽アプローチを開始する。72年に発表されたアルバム「キャラバンサライ」は、そんな彼の精神性が大きく反映された壮大なスケールの作品となった。ここには、ロックとかジャズとか、そんなカテゴリーは存在しない。“カルロス”の信じる音楽だけが大きくうごめいている。

“サンタナ”の大きな魅力に、ライブにおける、その圧倒的な演奏力がある。卓越したテクニックとパフォーマンス。それは、徐々に彼らの方向性に変化をもたらせた。76年の「アミーゴ」以降、“サンタナ”は、そのテクニックを全面に押し出したフュージョン指向のライトな音楽へと形を変えていく。

時は、80年代。混沌とした時代に、彼らもまた足を踏み入れた。
アメリカ、特にサンフランシスコには“ラテン・ディストリクト”と呼ばれる中南米系アメリカ人だけの住むラテン・コミュニティが存在する。これは、アメリカ社会が抱える人種問題の一端といえるが、“サンタナ”は、その“ラテン・ディストリクト”から生れた初めて世界的成功を収めたバンドだった。

ロック・ミュージックが、あらゆる解放を叫び、挫折した60年代。それを見届けるようにして登場した“サンタナ”は、その人種的解放を、“ラテン・ロック”という自分のアイデンティティとなる音楽を通じて、やってのけた。そして、それは、2000年春のグラミー賞受賞というこれ以上ない結果として、実を結ぶこととなる。

1987年、カリフォルニア州政府は毎年6月6日を“サンタナの日”と定めた。

“カルロス・サンタナ”は、ミュージシャンである以前に、ラテン系アメリカン最大のヒーローである。
そして、それは、すでに全世界の人間が認識している事実でもある。
「A DIOS (アディオス!)」!
<SANTANA Sayings >
「ウッドストックでは、オレたちの出番までは、かなり時間があったんで、ステージ裏でLSDをきめてたんだ。そしたら急に出番が早まっちゃってさ、音をはずさないように、祈るような気持ちで演奏したよ。」

「人々を悩みや苦しみから解放してあげるために僕は演奏して来ました。踊りだし、セックスしたくなるように扇動してきました。でも、そんな快楽は、ほんの一時的なものです。本当に大切なのは、世界中の人々に聖なる神の光を指し示すことです。僕たちは、魂のこもった音楽によって聖なる神の光へ、人々を向かわせたいのです。」

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