【Soul Vol.2】
Donny Hathaway/ダニー・ハサウェイ
何ごとにも先駆者・開拓者がいるようにブラック・コンテンポラリー・ミュージックにも当然それが存在する、と共に黒人の公民権運動の一端を担ったといっても過言で無い深き哲学を持つブラックミュージックの体現者「ダニー・ハサウェイ」を御紹介。
ヲDo you want to open a new chapter in the future?
「ダニー・ハサウェイ」
を語る時に、僕はこのキーワードを必ず用います。“未来”・・そして“希望”。現代の殺伐とした空気には、この言葉自体とても薄っぺらく、うさん臭ささえ感じてしまうかも知れないし、シラケタムードが漂うかも知れない。しかし、60年代、70年代の黒人社会史がそのようなキーワードをマトモに求め、彼の創作する音楽のバックボーンであった事は紛れも無い事実である。「人種差別」という目に見えない厚い壁に時に語り、時に体当たりし続けて33星霜。ちょっとハスキーで甘いソウルフルな歌声に、「胸を張って生きていこう!」との呼び掛けに、自然と体に力が湧き出てくる。
ヲDanny's personal history
少々ダニーのキャリアを紹介すると、1945年10月1日シカゴに生を受けたダニーは、生後から大学に進むまでセントルイスで過ごした。その間、厳格なクリスチャンの祖母に育てられ、人より教会で過ごした時間が長かったらしい。そのお陰か、なんと3才でウクレレをつま弾き歌う“ゴスペルキッズ”として有名だったそうだ。1964年にワシントンにある黒人の名門校ハワード大学に入学、そして奨学生となり‘音楽教師’か‘説教師’という進路で悩む。が、結局友人でパーカッショニストのリック・パウエルとトリオを組み‘ショービジネス’を選択、この地を中心に活躍しはじめる。プロとしての活動は故郷のシカゴに帰った辺りかららしい。キーボーディストとして有名になると同時に作曲や編曲、プロデューサーとして注目を浴びる。幅広い音楽性の中の特徴としてライブなどを聴くと解る通り、少年期から影響を受けているゴスペル・スタイルの掛け合いなどで彼の生い立ちを垣間見る事ができる。
ヲYour existence ...
冒頭にダニーの事を、先駆者という表現をしたが、70年代のソウルの名曲・名盤のクリエイタ−達の創作意欲を高め、商業マーケットの環境に“勢い”を吹き込んだという意味において先駆したアーティストという方が正確かも知れない。
1stアルバム「Everything is everything」(邦題:新しきソウルの光と道)が、70年に発表。かのマ−ヴィン・ゲイ「What's going on」に始まって、スティーヴィ・ワンダー「Tolking book」やカーティス・メイフィールド「Back to the world」とこれらの大ヒットはダニー登場以降である。ヒットした理由が、すべてあてはまる訳では無いとおもうが、充分な効力だったとしていいんじゃなかろうか。
ヲSelection branch
1979年1月13日ニューヨークのアパート(ホテル?)の15階から投身自殺。
以前、彼の事に興味を持ち始めキャリアを調べてた時、正直ショックだった。ある知人から聞いた所「最後の方は、ライブでは曲を演奏せず説教するだけの時もあったらしい。かなり精神的に追い詰められて人格まで変わってしまってたらしい」と。ライナーノーツにはこうある「神を拠り所として生きてきた訳であり、彼の歌にはいくつかそういうものがある。しかし、ダニーは教会へ、又は神へ避難の場を求める事も最後には諦めてしまっていた。なぜなのか。これはあくまで想像だが、黒人解放とキリスト教というものが、どこまで相容れるものなのかということについてダニーは悩むようになっていたのではなかろうか。」「神にも、妻にも、何にも頼れず、ダニーはこの世から一人去った。」(日暮泰文氏原稿より抜粋)様々な考え方があるが、幼少の頃から信じていた神を頼ることがなくなっていたということは、突き詰めると現状の運命・宿命を転換・打開しようとする生き方と信じてるモノの間に、どうしようもない矛盾を感じていたのではなかろうか?
ヲD's word
今回はディープになってしまった・・いやっ、ならざるおえない。ナゼならば僕自身、
ダニーの音楽にハマッタ理由に彼の人生哲学が大きな比重を占めるからだ。「Someday we'll all be free」(邦題:いつか自由に)を歌詞に照らし合わせ聴いた時は鳥肌がたった。いつもはノリで聴いてる音楽も、彼の歌声で体が一瞬フリーズする。なんだろう?この熱く込み上げてくるものは・・。少しだけ解った事は「ダニーは、俺にとっていつでも応援歌なんだ」ということ。安っぽい言い方かも知れないけど的確な表現。溢れ出してくるものは止めようが無い・・・今、またレコードに針を落とす「To be young,gifted and black」。イイわぁぁぁ〜(T-T)

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